04.20.13:00
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10.05.10:54
とりあえず、導入部(未完)
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背中を冷たい汗が伝っていった。
薄闇の中で、寄せられた肩胛骨の下に藍色の影が一際くっきりと見える。
ゆっくりと舌をはわせると、微かな塩の味。この年頃の男にしては薄い体臭。
張り詰めた背中の筋肉は、素直に美しいと思えた―――
tarantella
佐藤寿也の朝は早い。
野球部時代の名残で、欠かした事のないロードワークを5キロ。軽い筋トレを済ませると
汗を吸った薄い布地が肌に貼り付いた。身体から上がる蒸気が大気に溶けて消える。
見通しの良くなった街路樹には、見上げると端が茶色く捻れ上がった葉が1枚ぶら下がっていた。
寮の部屋に戻り、良く乾いたタオルで汗を拭うと。一連のトレーニングの仕上げに冷蔵庫から良く冷えた水を取り出す。
淡い色のついた人工のボトルに書かれた文字にたいした興味は湧かないが、喉を通る硬質の感触は嫌いじゃない。
水の銘柄なんて気にした事はなかったけれど、これは気に入っている。
たぶん―――
『これ、けっこう美味いぜ。』
ふいに、彼が「美味い。」と勧めてきた時の記憶が頭をよぎって、無意識にかぶりを振っていた。
◇◇◇続
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