04.20.13:10
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10.06.10:56
外出する前に、ちょっとだけ(眉トシ注意!!)
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朝特有のざわついた気配の下駄箱を抜けて、教室のドアを潜ると、待ってましたといわんばかりに声がかかった。
tarantella 3
「佐藤くーん、今日の数学のプリントやってきた?」
「そういうふうに聞いてくるって事は・・・」
軽くジャブを入れるフリをしながら聞いてやると、案の定、相手は拝むような仕草で頭を下げてきた。
「すまん!オンにくる!!」
「全く・・・」
わざと眉間に皺を寄せながら、鞄を開けてプリントを取り出す。物欲しげに伸ばされた手に、紙が触れる寸前。
「購買の焼きそばパンと卵サンドにコーヒー牛乳。」
にっこりと作られた笑顔は、表面上、見事なくらい悪意のない物だった。しかしその『笑顔』を向けられた当人には絶大な効果を発揮した。
「わ、わかった・・・。」
「それで、君もプリント忘れたのかい?」
逃げるようにプリントを持ち去る後ろ姿を一瞥して振り返ると、そこには憮然とした表情の眉村が立っていた。
野球部のエースというだけではなく、その均整のとれた長身と、無機質な表情は雑多な群れの中でもひどく目立つ。実際、他クラスでもある眉村には教室の至る所から、ちらちらと無遠慮な眼差しが向けられていた。
軽くため息をつくと、眉村は寿也の肩に触れた。
「・・・放課後」
簡潔で、むしろ簡潔すぎるくらいの誘いの言葉。
朝一番で誘われるなんて頻繁にある事ではないが、寿也を誘う時の眉村は必ずクラスにまで来る。意外なくらい律儀な性格は、思ったよりも居心地が良かった。
「判ったよ」
今日もまた、何気ない風を装って返事をする。
承諾を得た眉村が、長身を返して教室を出て行く姿を寿也は見送った。
微かに右肩が上がっているのは、彼の機嫌がいい証拠だ。
そんな誰も知らないような癖を覚えるくらいには、関係している。
◇◇◇続
ひ、一人でどこか遠い所の行ってしまったようです~。
トシゴロトシのはずなのに(涙)、いや、そこに最終は落ち着くはずなんですが・・・。
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