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MAJORを愛するあまりのテキストブログ。気儘に更新。当然のように女性向け。                      苦手な方はplease back! 自衛推奨派です。

04.20.13:07

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11.09.07:45

長編続き

また間が空いてしまいましたが(汗)、長編続きです~。
相変わらず、暗くてすみません・・・。
今日は、また憧れの方々にお会いできる!!朝からどっきどっきです!!

あわわ、何をお話しようかしら・・・。そりゃmajorのお話なんですが、テンションがすでに上がってます~!!!



 

白い光に網膜を焼かれる気がして、なかなか目蓋を上げる気になれない。ようやく目を開けたのは、喉の渇きだけはどうする事も出来ないと気づいたからだ。

そうして目覚めた世界においては、予想通りの明るさに顔を顰める事しかできなかった。




tarantella 7




 



 


「気がついた?」


「早乙女トレーナー・・・。」


柔らかな口調に不釣り合いな、骨太な顔が心配気に見下ろしている。

「どこか痛いところは無い?痛くなくても、気持ち悪いとか寒いとか?」


早口でまくし立てられたが、まだ覚醒しきっていない頭にはぼんやりとしか伝わってこない。

「・・・とりあえず、大丈夫みたいです・・・。」


「本当に?」


「ええ、少し目眩がしますけど、特におかしい所はありません。」


乾いた喉に声が貼り付くようで、無意識に首に手を当てた。

ゆっくりと起きあがる背中に、早乙女が傍らの枕を挟んでくれる。――全く、気遣いは並の女性以上だ。それでも尚、不安を滲ませた瞳で見つめられると、些か居心地が悪くなって寿也は視線を窓に向けた。

あれから何時間たったか判らないが、日はすっかり暮れてしまったようだった。


「林檎剥いてあげましょうか?」


「え、あ、いいです。そんなに腹も空いていないので・・・。」

「遠慮しちゃってぇ~。相変わらず可愛いわねぇvv」


(今、語尾に何がついた・・・?)

身体をくねらせ、頬摺りせんばかりに顔を寄せてくる早乙女に、薄ら寒いものを感じて、寿也は膝の辺りの毛布を抱きしめた。

後ずりしても、せまいベッドの上では殆ど下がれるスペースが無いのが哀しい。

 

しかし、そんな寿也を尻目に、早乙女はガサガサと足下の紙袋を探っていた。

 

「ちょっと待ってなさいなv」

 

軽いウィンクと共に用意された果物ナイフと林檎に目を見張ると。手に比べて小さく見える鮮紅色の球体は、くるくる回転しながら瑞々しい中身を晒していった。

無骨な指先から作られたとは思えない繊細さで、果実は均等に切り分けられ、皿に盛られる。

細い銀のフォークが添えられた頃には、仄かに漂う爽やかな香りに、寿也の腹がくぅと鳴った。

「え!」

「あら。」

頬から耳にかけてゆっくりと朱を昇らせる寿也に、世話好きのトレーナーは弓なりに眉を曲げると皿を差し出した。

(今度は、気恥ずかしさから目を合わせられない寿也に、『食べさせてあげようかしら?』などと早乙女が考えていた事は、幸い(?)本人に勘づかれる事は無かったが。)

 




「・・・ありがとうございます。」


 

左手で、皿を受け取ろうとした瞬間の事だった。

 

乳白色の陶器は、寿也の指先をすり抜けるように下へと落ちていく。

 

割れた皿に混じって、砕けた林檎が床に散らばった。

 

「す、すみません!!」

「いいから!・・・佐藤くん、少し待っていてくれる?」

慌ててベッドから降りて、皿を拾おうとした彼を早乙女が止めた。

左手首を握る力と、先程までとうって変わった強ばった表情に、寿也の身体にも自然と緊張が走る。

散らばった皿をそのままに「ちょっと試してみたいの」と言って、早乙女はゆっくりと寿也の左手をマッサージし始めた。何かを見つけようとするかのように、手首から指先へとそれは丹念に進められる。

「痛い所は無い?」

目覚めた時と同じ問いを繰り返されて、頭を振る。痛みが無いと判ると、次は拳を握るように指示を出された。

言われた通りに左手を握り、ゆっくりと広げる。別段、違和感もなかったので隣を見ると、それでもまだ早乙女の表情は厳しいままだった。

 

「特に・・・、何もありませんけど。」

 

「じゃあ、これを持ってみて。」

 

紙袋には、まだ数個残っていたのだろう。

差し出されたのは、まだ剥かれていない林檎だった。

蛍光灯の灯りを反射して、作り物めいたそれに手を伸ばすと、寿也は無造作に掴もうとした。

「・・・あれ?」

指先に固く冷たい感触があったかと思うと、林檎はそのまま引力に惹かれて落ち、床を転がってゆく。確かに掴んだはずなのに、左手は床に転がった物の形を残したまま固まっていた。

どくん、と心臓が跳ね上がる。

耳の中をごうごうと血液が流れてゆく音が、はっきりと聞こえた。

 

「佐藤くん・・・、あなた・・・。」

早乙女の声が、どこか離れた所から響いてくる。

 

早乙女の声が、どこか離れた所から掠れながら響いてくる。無様な形で固まった左手の上に、ぽとりと滴ったのは自分の汗だろうか。

 

スチールのドアが軋むような音を立てて、駆け出す早乙女を見送りながら。

寿也は、その背中に遠ざかる『彼』の後ろ姿をもう一度見た気がしていた。






□□□続く


 

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