04.20.17:09
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10.13.16:32
トシゴロな話
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いい加減、トシゴロブログと言い張るには、内容が厳しい気のする今日この頃・・・。
やっと名前に恥じない(笑)話を追加。中身が追いついていないというのは・・・、精進します(涙)
(しかも、今日は前編のみです~。予定は前後編)
それは、たとえば、の話。
乾いた音を立てて、アルミの袋が開けられる。
ぱっと散ったのは、油の揚げられた香ばしい匂いと砕けた黄色い欠片。
■■■ Innocent word ■■■ 前編
「うわっと、と、ちょっとこぼれちまったぜ」
吾郎がラグの上に広がったポテトチップスの欠片を慌てて拾う。毛足の短いものとはいえ、粉々になった欠片は容易にはとれそうになかった。
「あー、そのままでいいよ。後で掃除機でもかけるからさ」
片手にトレイを持った寿也が、ひょっこり顔を出す。
たいして綺麗なモノでもないからさ、と笑って言われると、吾郎も大人しく自分の定位置に戻るしかない。
うっすらと汗をかいた、氷たっぷりのグラスが、2人の間にあるテーブルに置かれる。
「吾郎君は、コーラで良かったよね」
「おう、さんきゅ、な」
「どういたしまして」
トレイを片付けた寿也は、今度は濃藍色のバッグを取り出した。どこかで見覚えのある蛍光色の印字。
「へーっ。それが、トシが見たかったっていう映画か?」
興味津々に覗き込んでくる無邪気な瞳を軽くかわして、寿也はケースを開けて薄い銀色の円盤をセットした。
「どうせ吾郎君は、アクションものばかりしか見てないだろ」
「げげげ、違うのかよ。お前、一人で恋愛モノとか見ちゃうわけ?」
“こんな風にちゅーしたり”“ワタシヲステルノ!?アナタノコヨ”などと身体をよじり、一人芝居の要領でベタなラブシーンを演じてみせる吾郎にも、寿也はしばしの無言の後で―――
「吾郎くん。」
「はい?」
「まだ猿芝居を続ける気?」
「黙って見ていられないなら、僕にも考えがあるよ・・・」
「は、はいっ!!」
(こ、怖ぇーぜ!トシ・・・)
その時の恐怖は、ガス欠の車に受験票を忘れた時に匹敵するものがあった。一気に体温が下がったのが錯覚でなかった証拠に、背中には嫌な汗が伝っている。
こんな状態の寿也を目の前にしては、さすがの吾郎もたまらず居住まいを整えた。
「はぁ。何、正座してんの?足崩せば?」
「い、いえ・・・このままでイイデス・・・」
(相変わらず冗談通じねぇよな・・・、
っていうか今、
鼻で笑われなかったか、俺!?)
『ちくしょー、覚えてろ』などと思いながらも、口に出さなかったのは、
――この場合もっとも懸命な方法だったといえよう・・・。
■■■
少し褪せた色彩は、この映画の撮られた時代を思わせる。
画面のなかで物語は佳境にさしかかっていた。
誰もいない島に流れ着いた1組の男女。男は島を出ようと言い、女は危険を冒すよりここに残ろうと涙を流す。
ありきたりな話の筋に、お決まりの愁嘆場。
あくびを噛み殺す事さえできない様子の吾郎を横目で見て、寿也は停止ボタンを押した。
「んぁ?もう見ないのか?」
「うん。別にかまわないさ。それよりも吾郎君こそ、眠くなってきたんじゃないの?」
「でも、お前この映画見たかったんだろ」
リモコンに手を伸ばして、再生ボタンを押そうとするのを寿也か微かに笑って留める。
「いいんだよ、初めて見た訳でもないし。ちょっと懐かしくて借りてきただけだから」
でも、昔見た時はもっとおもしろいと思ったんだけどな。思っていたよりつまらなくてごめんね。と呟いた横顔は、どこか遠い所を見ているようだった。
■■■前編(了)
うー、わー、全然トシゴロじゃないかも(涙)。そんな気がしてきた。
今日、またまた素敵サイト様にこっそりリンクを貼りました~。あ、挨拶なんていつ行けるのかしら・・・。
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